カーコーティングのメンテナンスキットとメンテナンス剤|いま載っている被膜で選び方が決まる
ディーラーや施工店で車を受け取ったとき、コーティングの被膜と一緒に箱を1つ渡されることがあります。専用のシャンプーとクロス、小さなボトルが入った、いわゆるメンテナンスキットです。この記事は、被膜が付いた状態で車を受け取った方、あるいはすでにコーティング施工済みの車に乗っていて市販のメンテナンス剤を買おうか迷っている方に向けて書いています。
先に、この記事が扱わない範囲を2つはっきりさせておきます。1つは、手元の剤を今日使うかどうかという話だけを扱う点です。被膜そのものを入れ直す再施工が必要かどうかの判断は、日常のお手入れ全体を扱った記事と、耐久年数の記事が担当します。もう1つは、洗車そのもののやり方や頻度には踏み込まない点です。手洗いの手順と、洗車の頻度や方式の比較は、それぞれ別の記事にまとめてあります。
そのうえでこの記事が扱うのは1点だけです。メンテナンス剤は製品のスペックで選ぶものではなく、いま自分の車に載っている被膜の身元で答えが決まります。剤の側が想定している前提と、手元の車の実際を突き合わせる。その照合の手順を書きます。
納車時に渡されるメンテナンスキットは、その店が施工した被膜に合わせて中身が決まっている

メンテナンスキットは、洗車用品の詰め合わせとして売られている汎用品とは成り立ちが違います。施工店やメーカーが、自分たちが塗った被膜を前提に「この被膜を維持するならこれとこれがあればいい」と絞り込んだ結果が、箱の中身です。逆に言えば、箱に入っていないものは、その被膜には要らないと判断されたものでもあります。中身の構成そのものが、施工した側の回答になっているわけです。
この考え方は、洗車の記事でも一度触れています。コーティング車の正しい洗車方法では、やってはいけない行為の1つとして「洗車後に市販のワックスをかける」を挙げ、メンテナンスには施工したコーティングに対応した専用のメンテナンス剤を使ってください、と書きました。あちらは原則を1文で言い切っている箇所です。この記事はその1文を引き受けて、「対応している」かどうかを実際にどう照合するのかを最後まで書きます。
照合の出発点は、キットではなく車のほうにあります。渡された箱に何が入っているかを見る前に、その箱が何に向けて組まれたのか、つまり自分の車に載っている被膜が何なのかを知っているかどうかで、この先の判断がすべて変わります。中古車で購入した場合など、前のオーナーが何を塗ったのか記録が残っていないこともあります。その場合は、剤を選ぶより先に身元を確かめる作業が来ます。
同じ棚に並ぶメンテナンス剤が、それぞれ別の被膜を想定して作られている
メンテナンス剤を探すと、ランキングやおすすめをまとめた記事が何本も出てきます。ひととおり目を通した方なら、上位に並んでいる製品が記事ごとに違うことに気づいたはずです。これは評価が割れているというより、それぞれの剤が最初から別の被膜を想定して作られているためです。想定している相手が違うものを一列に並べれば、並べ方の数だけ順位ができます。
そこで見る場所は、性能をうたう文言ではなく、パッケージや説明書に書かれた想定条件のほうになります。「ガラスコーティング施工車用」「セラミック被膜対応」といった書き方は、その剤がどの被膜の上で使われることを前提に設計されたかを示しています。一方で「全塗装対応」のような広い表記は、塗装の種類を問わないという意味であって、どんな被膜の上でも同じ結果になるという意味ではありません。読む対象が、塗装なのか被膜なのかで指しているものが変わります。
照合はここで終わりません。表記に自分の被膜と同じ言葉が並んでいても、想定と実際が一致しているとは限らないからです。同じ「ガラスコーティング」という呼び名でも、層の数も硬化のさせ方も施工店ごとに違います。だから最終的な確認先は製品の表記ではなく、その被膜を塗った施工店になります。施工店から渡されたキットが手元にあるなら、それが照合済みのいちばん確実な答えです。
手元のキットが「シャンプー+撥水剤」型か「クリーナー同梱」型かで、使う順番も回数も変わる
キットの中身は、大きく2つの型に分かれます。1つは専用シャンプーと、洗ったあとに塗る撥水剤やトップコートが入っている型。もう1つは、そこに被膜表面の固着物を落とすクリーナーが同梱されている型です。どちらが上ということではなく、被膜の性格に合わせて構成が変えてあると考えるのが実際に近い見方です。
型が違うと、使う順番も回数も変わります。シャンプーと撥水剤だけの型は、洗って、乾かして、塗るという1本の流れで完結します。回数の目安も、上に乗せる剤のもちに合わせて組まれています。クリーナーが同梱されている型は、洗ったあとに落とす工程が1つ挟まります。この落とす工程は毎回行うものではなく、洗っても残るものが出てきたときだけ入れる設計になっていることがほとんどです。順番を入れ替えて先にクリーナーを当てると、砂や埃が乗ったまま面を触ることになります。
ここから先、どの洗剤なら使えてどれを避けたいのか、そしてトップコートという層が被膜に対して何をしている層なのかは、被膜の種類によって答えが変わります。とくにセラミック系の被膜は厚みと硬さがある分、この判断が他と違ってきます。セラミックコーティングのメンテナンスは何が違うかにまとめてあるので、手元のキットがセラミック向けなら、先にそちらを確認してください。
説明書の「◯か月ごと」より先に出る合図——面ごとの水の流れ方が揃わなくなったとき
キットの説明書には、たいてい「◯か月ごとに施工してください」という記述があります。これは製品の側が置いている目安であって、当店の作業の話ではありません。実際には保管環境も走る距離も洗い方も車ごとに違うので、書かれた周期が来る前に手を入れたほうがよい車もあれば、まだ早い車もあります。周期は出発点であって、判断そのものではありません。
周期より先に出る合図として、いちばん読み取りやすいのが水の流れ方です。洗い終わって水をかけたとき、ボンネットとドアで水の引き方が揃わなくなっていたら、その面だけ表面の状態が変わってきているというサインになります。新品の被膜は、どの面でも水がほぼ同じように動きます。時間が経つと、この動きが面ごとにばらけてきます。なぜ面によって差が生まれるのかという仕組みには立ち入りませんが、使う側にとって大事なのは、揃わなくなった時点が剤を入れる合図になるという点です。異常ではなく、日常のなかで起きる変化として読めばかまいません。
当店が、剤を選ぶ前に被膜を見ている理由
当店にメンテナンスのご相談をいただいたときは、どの剤を使うかを決める前に、被膜の状態を見る時間を取っています。まず純水で洗い上げて、水道水に含まれるミネラル分を新しく持ち込まない状態を作ります。そのうえでLED照明の角度を変えながら、面ごとに光の返り方がどう違うかを確認します。同じ車でも、面によって残っている状態が違うことは珍しくありません。
順番を逆にして、先に剤を決めてから面に当てると、手を入れなくてよい面にまで触れることになります。創業1991年から続く当店では代表の馬場俊一が1台ごとに全工程を担当しているため、その車に何を塗って、いまどこまで残っているかを把握したうえで、触らずに済む面は触らないという判断ができます。
そして、ここで見ている状態が、手元の剤で戻る範囲を超えていると分かることもあります。剤を使う話なのか、被膜そのものを入れ直す検討に入る話なのか。その切り分けはカーコーティングのメンテナンス方法の記事が担当しているので、合図が出たあとの行き先はそちらで確認してください。
キットが未使用のまま何年も残った車と、使いすぎた車で、被膜に起きていること
納車のときに受け取ったまま、箱を開けずに置いてある。これはよくある状態です。この場合、被膜そのものがなくなるわけではありませんが、表面に載ったものを落とさないまま時間が経つぶん、洗車だけでは戻りにくくなっていきます。乾いて残ったミネラル分が輪のように定着したもの(イオンデポジット)も、そのままにしておくほど手元の剤の守備範囲から外れていきます。ここまで来ると、キットを開けて説明書どおりに使っても、期待した見え方には戻りません。
逆に、キットを頻繁に使ってきた車にも別のことが起きています。撥水剤やトップコートは、重ねるほど効くというものではありません。前に塗った層が残っているうえに新しい層を乗せると、面によって厚みがばらつき、水の流れ方がかえって揃わなくなることがあります。落とす工程を挟まずに、塗る工程だけを繰り返してきた車で起きやすい変化です。
どちらの状態も、被膜が壊れたわけではありません。ただ、手元の剤が想定している「ある程度整った面」から離れてしまっているという点では同じです。剤の側は、整った面の上に使われることを前提に設計されています。前提から離れた面に同じ剤を当てても、書かれているとおりの結果にはなりません。これが、この記事の最初から続けてきた照合の話の行き着く先です。
使っていないキットが手元にあるなら、まず1回使って、水の流れ方がどう変わるかを見るのが実際的です。変化が出るなら、その剤はまだ手元の被膜と噛み合っています。ほとんど変わらないなら、剤の側ではなく面の側を確認する段階に来ています。
次に出てくる疑問——「この被膜は、あと何年もつのか」

メンテナンス剤を使い続けていると、必ず次の疑問が出てきます。手をかけていればこの被膜はいつまでもつのか、そもそも受け取ったときに聞いた期間はどういう条件での話だったのか、という点です。メンテナンスの有無は、被膜がどれだけもつかを左右する要因の1つとして扱われています。剤を使う話と、もちの話は地続きです。
種類ごとのもちの目安と、「◯年保証」という表記が実際には何を指しているのかは、車のコーティングは何年持つのかの記事にまとめてあります。手元の剤をどう使うかが見えたら、次はそちらを読んでみてください。
まずはお気軽にご相談ください
「どのコーティングが自分の車に合っているか分からない」「料金の目安を知りたい」など、小さなご相談でもお気軽にどうぞ。車種・コンディション・ご予算をお聞きし、最適なプランをご提案します。